マスターシーン3

どこでもない場所がいいですね。誰かから干渉されない場所なら、夜空の下でもいい

じゃあ、夜空の下にしましょうか

綺麗。では、どこでもない場所まで行って、そこでソランがようやく目覚めるようですね

う、ぅ……。……君たちは……

すべて終わったよ

そうですか……

シオン・ルドワズは

いえ

指を立ててその先を止めましょう

ありがとうございます。……恥ずかしい話ですが、この何年も、僕はシオンを止めることができませんでした

それは血僕だから、だよね

ハテナっていう顔をしています。イルローズの世界設定に血僕って載ってないので、世界的に知られていないとしています

じゃあそれは、その、シオン・ルドワズの術によってだよね

おそらくそうなんでしょう。ただ、それで……なぜ僕をここに?

そのままだったら、あんたは牢に入れられていただろう

それが、妥当でしょうね

だろうな。だが、あんたはそれでも、抗おうとしていた。そのあんたをそのまま裁きにかけてしまっていいのかなと、勝手ながら、ちょっと迷ってしまったんだ

そう……ですね。裁きは、受けなければならないと思います。僕は、自分で行動を決められなかったとはいえ、父を、手にかけました。それに、僕の作戦において、多くの者に命を落とさせました……

シオンが使った術は、我々の世界では『血僕』と呼んでいる

はは、確かに……下僕のようなものでは、ありましたね

業血鬼による一方的な支配。それによって命令されたんだ

それを加味したところで、いきつく妥当な線は監禁、でしょうかね

たぶんあのままあそこに放置しておけば、そうなってただろうね

十大貴族には、ルドワズ領の復興のため、エミリー公爵を公爵に推したフィン・キルシュタイン公爵がいます。彼は理知的で、エミリー公爵があの黒翼戦争に関わっていないことを把握し、そういった判断をされました。ですから、僕が自分の意思で行動をしていないと分かったのなら、おそらく、処刑ということにはならないでしょう

それならあなたはこのあと、帝都かどこかに行って、自ら裁きを待つの?

それが、正しい……ことなのでしょうね

そうかもね。あなたがそれで納得してるんだったらいいんだ。でも私があの場からあなたを連れ去ったのは、ただ正しいとか妥当だとか、そういう理由であなたが拘束されてほしくなかったから

ありがとうございます……。罪は償わなければなりません。それは、僕も痛感しています。ですが……一つだけ。どうしても、したいことがあります

促します

弟と、話がしたい

ウィル・ノイは帝都ですか?

いえ、ウィル・ノイの説明によると、他領で生活とあります

えーと、『どこか』ということですね

どこかって分かるんですか?

ソランは知ってるんじゃない?

いや、全然知らんすw

彼と話をしたら、出頭しようと思います。いい、ですか?

ああ。ウィル公爵も、彼の復讐に区切りをつけるべきだ

僕を殺そうとしてくれていたこと……、嬉しかったんです

嬉しい?

ええ。だってそれは、……ここでこの言葉を使うのもなんですが、愛、ということでしょう?

分からない。全然分からない。でもそれが、あなたにとっての喜びなの?

ええ。僕が業血鬼になったと、そう知って、僕を殺そうとしてくれた。あのとき「ありがとう」と伝えてくれと言ったのは、彼を肯定したかったんです

あぁ……

彼にはちゃんと伝えたよ

伝えてくれたんですか。あの……野暮ですが、反応は……?

怒って通信を叩ききられたよ

でした、か……。あはは、恥ずかしい、その。昔からそうなんですが、ウィルの前となると、どうしても本音で話してしまって。彼の気持ちを考えるならもっと、誘導だとかを使って、喜ばせてあげたり、自信を持つようにさせたりするべきなんだとは思っているんです。今回も、失敗してしまいましたね……

あなたは通じるといいと言ってたけど、やっぱり通じてなかったよ

そうですね……。最後に、一度だけでも、通じるといいのですが……

これ、あなたに渡す

と言って、シオンの灰を、あの部屋にあった綺麗な箱に詰めて渡します

これは?

シオン・ルドワズの……。私たちより、あなたが持ってるべきだと思う

……泣けたら、よかったんですけどね

泣けないんだ

僕の、吸血鬼としての欠落は、涙でして

そうだね。泣けたらよかったと思う。そうすればきっと、彼女が少しだけ、ほんの少しだけ報われたと思うから

ごめんなさい、シオン……

箱をぎゅっとして

ありがとうございました、エメスさん、ツクモさん。それでは

そう言って、闇の中に去っていきます

それを、消えるまで見送っていました

では、終幕フェイズにまいりましょうか
『人鬼血盟RPG ブラッドパス』の二次創作です。
c2019 からすば晴/N.G.P./アークライト/新紀元社


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